あしたの星を待っている




「花菜! おはよう」

「おはよう……ねぇ、何か、ざわついてない?」


朝、教室に入ると明らかにいつもと違う雰囲気だった。

抜き打ちのテスト? って感じでもないし、特別な授業があるってわけでもなさそうだ。不思議に思っていると、真紀子ちゃんと仲良しのあずちんが「転校生が来るらしいよ」と教えてくれた。


「この時期に転校生?」

「そ、珍しいよね」

「どうせなら2学期からにすればいいのにね」


うんうん、と真紀子ちゃんと七海が頷く。

1学期の期末テストも終わり、夏休みまであと少しといったところ。

時期もそうだし、高校生で転校するってあまり聞かないから、よほどの事情があるんだろう。そんな勘繰りも相まっての、ざわつきらしい。


「どんな子かな?」

「私、イケメン希望ー」

「女の子って聞いたけど」


さすが、あずちんは情報通だ。

七海と真紀子ちゃんの希望をあっさり否定し「残念」と笑ったまさにその時、噂の転校生が担任の先生と一緒に教室に入って来た。


「ほらー席付けー。お待ちかねの転校生だ」


たぶん、先生はここでみんながどっと笑うと思ったらしい。

静まり返った教室を見渡して、えっ、という顔をする。

だけど、私たちはハッとしながら、男子なんかはあんぐり口を開けながら、しばらく放心していた。

その転校生があまりに綺麗な子だったから。







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