あしたの星を待っている
「黒沢 紗友里(くろさわ さゆり)です。よろしくお願いします」
綺麗な子は、やっぱり名前も綺麗なんだな。
自己紹介を終えても尚、クラス中の視線を集める黒沢さんは、お人形さんのように大きな瞳をパチクリさせ、軽くお辞儀をした。
黒く長い髪がさらりと前に落ちる。
「じゃぁ、黒沢の席は~、夕里の後ろが空いてるな。あそこ、廊下側の1番後ろだ」
「はい」
「夕里、悪いがしばらく面倒みてやってくれ」
「あっ、はい」
手足長いなぁ、背も高そう。
それなのにウエストはキュッと細くて、女子の理想を全て詰め込んだような容姿だ。
「よろしくね」
「どうも」
緊張してるのかな?
そりゃそうだよね、私だったらもっとテンパってあたふたしたと思う。転校初日で知らない人だらけだろうし、できるだけフォローしてあげないと。
昔から私は、学級委員に選ばれやすいタイプで。
困っている人がいたら、助けてあげてねと頼まれることが多かった。
優秀、真面目、責任感が強い。
本当はそんなこと全然ないんだけど、いつの間にか創り上げられた人物像を裏切ることなく、また、そこから外れることを知らない。
いや、違うかな。
外れる勇気がないだけだ。