あしたの星を待っている
「お前、さっきから何なんだよ!」
「別に」
「へらへら笑ってんじゃねぇーよ」
怒っているのはうちの学校の2年生で、悪びれる様子もない瀬戸高の生徒の胸ぐらを掴んだ。
次期キャプテンといわれ、温厚で堅実な結城くんが怒るくらいだから、相当だったんだと思う。それは他の部員も同じで成り行きを見守る中、パシンと乾いた音が響いた。
キャーという悲鳴があがり、慌てて葉山先輩が止めに入る。
「おい、やめろ」
「だってこいつ、さっきからわざと!」
「分かるけど、殴ったら終わりだ」
「先に痛めつけてきたのは、こいつっすよ!!」
悲痛な叫び声に、体育館の中は再びざわつき始めた。
ベンチにはお腹のあたりを押さえて座り込んでいる部員や、足や顔をアイシングしている部員がいる。ラフプレイでない限り、当たらない場所だ。
酷いね、隣にいるななちゃんが呟いた。
本当に酷いよ。
なのに、これだけ周りの非難を受けても、やっぱり悪びれてないあの人はどういう神経をしているのだろう。
「おいお前ら、何があった?」
その後、騒ぎが大きくなってきたところで、顧問の先生たちが体育館にやってきて険悪な雰囲気のまま練習試合は打ち切りになった。