あしたの星を待っている


「あーあ、俺も西高受ければよかったなあ」

「お前が来なくてほっとしてるよ」


あれ、この声。


「またまたぁ。本当は嬉しいくせに」

「よせよ」

「つれねぇーこと言わないで昔のよしみで遊んでよ。吉野も寂しがってるよ」

「あいつとは、もう別れた」

「知ってる。おかげでマネ辞めたんだって。せめて俺が入部するまで待っててくれたらよかったのに」


待って、どういうこと?

マネを辞めたって、あの瀬戸高のマネージャーだった子のこと? 


「俺には関係ないことだ」

「相変わらず、別れたあとは冷たいもんだね。もう新しい女、見つけたの?」

「お前それ誰から聞いた?」

「誰ってあんな堂々としてて気づかないわけないでしょー。あんたにしては真面目そうな子だね」

「手を出すなよ」

「出さない出さない。ていうか、先に手を出したのは、あ ん た の 方 だけどね」


頭の中がぐるぐる回る。

私は今、何を聞いてしまったのだろう?

今の、何だったんだろう。

じゃぁ、と話を終えて足早に去っていくその背中は紛れもなく「彼」で、これはきっと熱のせいで悪い夢を見てしまったんだ。

そう思いたかった。



思いたかったです、葉山先輩。


< 60 / 171 >

この作品をシェア

pagetop