あしたの星を待っている
おっしゃる通りです。
返す言葉がなくて俯いていると、「先生はちょっと触るぞ」と断ってから私の右手を取った。脈を測るみたいだ。
静かな保健室の中、時計の音だけが聞こえる。
たった1分が、とても長く感じて、耐えきれず右手を引っ込めた私に、先生は優しく微笑んだ。
「もう大丈夫だな」
「お世話掛けました」
「うん、それは矢吹にも言ってやれ」
「えっ? る……矢吹くんに?」
「君をここまで運んでくれたんだぞ」
そうなんだ、瑠偉くんが。
私、完全に意識を失っていたんだろうな、運ばれていた時の記憶が全然ない。
冷水器のある場所から、この保健室まで結構距離あるのに。
また迷惑をかけてしまったんだ。
不意に、コツと軽く頭を叩かれた。
見るとバインダーを持った先生が、涼し気な表情でこちらを見ている。
「自分ひとりで抱えていたら、いつか爆発するぞ」
「え?」
「悩みがあるんだろ? 人には簡単に言えないようなものが。誰かに聞いて欲しいけど、言うのが怖くて、言ったところで解決するわけないし、自分さえ我慢すればいいやって思ってるものが、ここにあるだろ」
また、コツ、コツ、と頭を叩かれた。
だけど、全然痛くない。
痛いのはむしろ心の方だった。