あしたの星を待っている


事故に遭った日、両親は泣いていた。

とくにお母さんは酷く落ち込んでいて、傷が残るのではないかと私の体の心配ばかりしていた。

毎日更新していたSNSは、事故の後しばらく休んでいた。

私が退院した頃に復活したけど、事故ついては何も触れず、ただ事情があってと書かれていた。

あんなに毎日どうでもいいことや、知られたくないプライベートなことまで事細かく書いていたくせに、どうして事故のことは書かないのか。

事故じゃなく、事件だったから書けなかったのか。

聞いてないから分からない。

ただ、【完璧な】お母さんにとって、娘の事件は汚点だったのではないかと思う。




両親は喧嘩が増えた。

お父さんはあまり家に帰ってこなくなった。

不倫してるのかもしれない。

娘の私がそれとなく勘付くくらいだから、お母さんは知っているはず。

だけど、平然を装うのは妻としてのプライドなのか。

それともやはり、【完璧な】妻にとって夫の浮気は汚点になるからだろうか。


完璧なお母さんに私は何も言えなかった。

本当は事故じゃないと知っていること。

あの時のことを少しずつ思い出していること。

それによって男性恐怖症になったこと。

相談できるはずが無かった。

弱さを見せれなかった。



誰にも、誰にも言えるはずがない。

ねえ、こんなの誰が理解してくれるの?


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