あしたの星を待っている
04.告白と、夏祭り
「あ」
行くか、ここで待つか。
悩んだあげく待とうと決めた瞬間、ドアが開いた。
黒いギャルソンエプロンをつけた瑠偉くんが、驚いた顔で私を見ている。
「あの、この前は、」
「なにしてんの?」
「だから、この前のお礼を」
言おうと思ってここまで来たんだけど、やっぱりバイト先まで押し掛けるなんて気持ち悪いよね。
メニュー表を持ったまま困惑した表情を浮かべる瑠偉くんを前にして、居たたまれない気持ちになる。
でもこうでもしないと、直接お礼を言える気がしなかったんだ。
「仕事中、ごめんね。それとこの前、保健室まで運んでくれてありがとっ。じゃ、あ、帰る、ね」
一気に早口で言ったせいで、最後の方はカミカミだ。
笑って誤魔化し、踵を返したと同時に、待って、と持ってたカバンを掴まれた。
「1人で来たのか?」
「そうだけど……」
「紅茶、飲んでいけば。もうすぐバイトあがる」
「え」
いいのかな?
そう思いながらも、こっち、と言われるがままに窓際の席に腰を下ろした。ゆったりとしたシングルソファーが心地がいい。
中途半端な時間のせいか、他のお客さんはあまりいない。
前に来た時は七海と話していたせいで気が付かなかったけど、各テーブルごとに違うお花が添えられていて、この席にはヒメヒマワリが可愛らしい花瓶に入っていた。