あしたの星を待っている
「どうぞ」
「ありがとうございます」
しばらくして、紅茶が運ばれてきた。
優しそうな女性の店員さんが、ティーポットと白いカップ、ソーサー、それからミルクと並べていく。
「矢吹くんからミルクは2つって聞いたけど、あってる?」
「あ、はい。すみません」
「いいえ、ごゆっくり」
瑠偉くん、覚えててくれたんだ。
そういえば前に来た時も、生クリームが入ってないのを教えてくれた。子供の頃から変わらない好きなもの、苦手なもの、私も彼の好みはよく知っている。
大好物はハンバーグで、嫌いなのは梅干し。
あと、青野菜。
トマトもにんじんもあんまり好きじゃなかったかな、ハンバーグの付け合わせはいつも私のお皿に入れられて――。
ふと、お店のバックヤードの方に視線をやると、私服姿の瑠偉くんと話をしている黒沢さんが見えた。
『おつかれ』
『おう』
そんな会話が聞こえてきそうな和やかな雰囲気。
彼女はこれからシフトに入るのか、タイムカードを取ろうとしている。だけど、手の届かない位置にあったようで、瑠偉くんの服の裾をチョンチョンと引っ張った。
あそこって指をさして、瑠偉くんが手を伸ばす。
その光景を眺めていると、どうしてだか胸がチクリとした。
夏休みもこうしてバイトで会うんだ。