あしたの星を待っている
あらかじめ玄関に用意していた下駄を履いて、姿見鏡で全身をもう1度チェックする。
変じゃないよねって、髪型を気にするあたり、それなりに今日のデートを楽しみにしていたんだな、と苦笑する。
歩くたび擦れる踵を気にしながら袂を揺らし、駅の近くまで行くと私と同じように浴衣を着た女の子たちを発見した。
このあと地元のお祭りがあるのだ。
「花菜、こっち」
「先輩!」
待ち合わせ場所につくと、葉山先輩が手を振っているのが見えた。
走って駆け寄りたいところだけど、どうにも思う様にいかず、不格好な歩き方になる。そんな私を先輩は優しい笑顔で迎えてくれた。
「浴衣かぁ、可愛いね」
「ありがとうございます」
「でも、他の男に見せたくないな。髪の毛も下ろしてほしいって前に言ったよね」
「ごめんなさ、」
反射的に謝りかけて、やめた。
先輩に見せたくてせっかくお洒落してきたのに、どうして謝る必要があるの。
そう自分に問いかける。
良い子でいる必要ある?
「先輩、あの」
「どうしたの? そんな怖い顔して。もしかしてさっきの気にしてる? 冗談のつもりだったんだけど、ごめんね」
「冗談……」
「花菜があんまり可愛いから、独占してくてつい言っちゃっただけ。怒った?」
「いえ」
「良かった。行こうか」