あしたの星を待っている


そっか、冗談……。

冗談にしては目が真剣だった気がするけど、謝ってくれたしいいか。せっかくのデートを台無しにしたくないし。

だけど、このシュンとした気持ちをどうしてくれよう。

すぐ近くで手を繋いだカップルが仲睦まじそうにたこ焼きを頬張る姿を、いいなと眺めていたら、


「はーな」


と、スマホを構えた先輩が私の名前を呼び、拗ねたような顔を見せる。

それだけで不覚にもキュンとするんだから、なんて私は単純なんだろう。

いや、先輩がずるいんだ。

いつもは私が撮られる方だけど、たまには私も先輩を撮りたい。

他の誰にも見せない姿を記録したい。

その姿を私だけには見せてくれるんだもん、それでときめくなかない方が難しい。


「開始まで時間あるし、どうしよっか」

「あ、じゃぁ露店を見に行きませんか?」

「いいね、何か食べたいものある?」

「かき氷!」

「レモン味ね、行こう」


露店が並ぶ通りは、神社がある場所より奥まったところにあり、なかなかの賑わいを見せていた。

風に乗って甘い匂いだったり、ソースの良い匂いが鼻先をくすぐる。

リンゴ飴を持って歩く女の子が見えた。

懐かしいなぁ、子供の頃よく食べたなぁ。

水風船、金魚すくい、わたあめ、射撃、動物のお面、そういったお祭り特有のものに目を奪われながら歩いていると、ドンッと誰かにぶつかられた。




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