あしたの星を待っている


「うわっ!」

「えへへ、びっくりした?」


白い歯を見せて笑うのは、七海だった。

彼女は中学の時の友達と来たのか、私の知らない女の子と一緒にいる。


「花菜、浴衣じゃん。可愛いー。ずいぶん気合をいれたなぁ」

「そういう七海も、」

「先輩、こんにちはー」


人の話、聞いてないし。

先輩に挨拶をした七海は、隣にいる女の子に先輩がいかに学校でモテるかを力説し、最後に、「花菜の彼氏」と付け加えた。

いいなぁ、って七海の友達が笑う。

こんな風に紹介されると嬉しいような恥ずかしいような何ともいえない気持ちになるけど、他人から羨ましがられる分だけ、ちょっとした優越感を味わえる。

やっぱり先輩って、そういう部類の人なんだ。


「あれ、今のって黒沢さんじゃない?」


七海の友達と少しお喋りしていたら、突然、七海が神社の方を指をさした。

見ると、確かに黒沢さんらしき人が歩いている。

同じように七海が指さすところを見ていた先輩が、思い出したように、あっ、と呟いた。


「前に保健室で会った子?」

「そうです、そうです」

「あの子も地元なんだ」

「いや、多分違うと思うんですけど。転校生だし」

「じゃぁ、私と一緒でこっちに友達がいるとか?」


そう答えたのは、七海。

”友達”って言いながらも、七海の表情は若干曇っていた。

黒沢さんの友達で、この辺りが地元の人なんて、瑠偉くん以外にいるのかな。



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