あしたの星を待っている
「花菜、またね」
「うん、バイバイー」
地元のお祭りといったって、地元じゃない人が来ててもおかしくないし。
瑠偉くんと一緒にいるところを見たわけでもない。ただ1人で歩いている姿だけ。
それなのに、どうしてこんなにも嫌な気持ちになるのだろう。
私には先輩がいるのに。
ふぅ、と小さく息を吐いて空を見上げる。
星は今日も出てない、か。
「先輩、あの、ちょっとお手洗いに行ってきますね」
「分かった、ここで待ってる」
少し心を落ち着かせよう。
もやもやした気持ちのままいたら、勘の良い先輩にバレてしまう。
ついでにゴミも捨ててきますと、さっき先輩が買ってくれたかき氷のカップを2つ持って、道路の脇にある公園のトイレを目指した。
ここの公衆トイレは綺麗で、個室も広め。
なのに、やはりイメージのせいか人は少なくて、並ぶことなく入れそうだと歩を緩めたとき、ベンチの近くで柄の悪そうな男の人が数人が屯しているのが見えた。
嫌だな、ちょっと、いや、かなり怖い。
実は私の男性恐怖症にはランクがあって、こういった如何にも不良ですって感じの人たちが第1番に苦手。
触れることはおろか、話すのも、目が合うのも、同じ空間にいるのも無理。
それはきっと、あの時の記憶が――――。
「っ!!」
不意に肩を掴まれて、全身が氷のように固まった。
恐怖のあまり声も出ない。
心臓がドクン、ドクン、と今にも胸から飛び出してしまいそうなほど音を立て、冷汗が首筋を伝って落ちた。