幼なじみとの恋は波乱で。（仮）

「あの、月島さん」


昼休み、私が読書をしていると、

頭上から女子の声が降ってくる。


（あぁ、またか）


そう思って顔を上げると、


「あ…」


私の想像とは違い、

そこにいたのは

私にラブレターを託した女子だった。


「ごめん。あの…」

「奏のことだよね？

手紙、ちゃんと読んでたよ！」

「あ、そうなんだ…」

「それで、返事…、だよね？」


その子は何も言わず、

一回だけ縦に首を振った。


「なんか、今は他に好きな人がいる、

みたいなこと言ってた…」


この子と奏は付き合えない。


だから、私が代わりに振らなきゃいけない。


つらいよ………。


「………」


彼女の表情から、

微かな希望と大きな期待が

一瞬にして消え、

悲しみで覆い尽くされたことは、

十二分に伝わった。


「ごめん、誰かはわかんないんだけど…」

「……ん、ありがと！渡してくれて……」

「あ、うん…」

「それじゃ」


そう言って、

その子は自分の教室へと戻って行った。


「はぁ」


私は短くため息をつく。


こうやって嘘をつくのも

かなりの罪悪感があって、

精神的疲労がたまる。



もう嫌なんですけど。