幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
放課後。

私の前には、山積みになったプリント。


頭の中で、忌々しいあのセリフが蘇る。


『月島ごめんな!

先輩から怒られたくないし…。

月島に押し付けてごめん。

本当にごめんな!それじゃ!』


この言葉を発したのは、

今日一緒に日直だった、小嶋(こじま)。


小嶋、サッカー部だったけな。

サッカー上手くて、モテてるらしい。


ていうか、

「本当にごめんな!それじゃ!」って、

本当に反省してるのかよ。


そんなことを思いながら、

目の前に積まれたプリントを見て、

再び私はため息をつく。


こんなのやってたら、

いつ帰れるかわからない……。


「桃果?」


あ…!


この声。


甘くて、聞くだけでドキドキして…。


時々私に恋の苦さを教えてくれる。


「奏…?」


私は、振り返りながらそう言った。


私の目線の先にいたのは、

想像通り、奏だった。


奏は私の席に来ると、

私の目の前にあるプリントの山を見て、

「あ、それ、日直の仕事のやつでしょ?」

と言った。


「え、あ、うん」

「俺が日直の時にやらされたことある」

「あ、そうなんだ」

「……」

「……」


なぜだか、私たちの周りには、沈黙。


なんか、気まずい。


「それ、結構大変だぞ?」

「え…」


まじかよ。

最悪。

早く帰りたいのに…。


「もう1人の日直は?」

「部活だって。

----本当なのか、怪しいところだけど」

「ははっ」


私がポツリと言った一言に、

奏は笑顔を見せる。



…………………かっこいい。


私の心臓が、

トクンと甘い音をたてる。


………これを、恋というのか。


私は改めて “恋” の意味を知る。


「手伝おうか?」

「え?」


奏から出た、まさかの一言。


「これ大変だし、俺手伝おうか?」


奏が繰り返したその一言。


それは、私が待っていた言葉だった。


「いいの⁉︎」

「うん」

「部活は⁉︎」


帰宅部の私と違って、

奏はバスケ部に所属している。


「あー、今日OFFだから」

「いいの?帰るの遅くなるけど…」

「いいよ、別に」

「ありがとう!」

「それじゃ、早速するぞ」

「うん! ----ありがとね」

「なんか言ったか?」

「ううん!なんでもない!」


私の呟きは、

この40cmほどの距離でかき消された。


(あぁ、好きだなぁ…)


私は隣で作業を始めた奏の横顔を見ながら、

そんなことを考えていた。
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