幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
「それじゃ、私2階だから」

「あ、うん」


階段に着くと、夕夏は2階へと降りて行った。


教室へ向かう途中で、

4組から出てきた女子と、

ドン、とぶつかった。


「あ、ごめんなさい」


俺がそう謝るか謝らないかぐらいの時、

バサバサバサ…と音がして、

彼女の持っていた教科書類が落ちる。


「いえ…、こちらこっ……」


俺が落ちた教科書を拾うと、

彼女は驚いたようにこちらを向いて

目を見開いた。


「ん。これ」

「あ、ありがとうございますっ……」

「ん」


そのまま自分の教室へと帰るために、

廊下を歩こうとしたその時。


「あ、あのっ…」


後ろからさっきの女子が呼ぶ声がした。


柔らかい髪は、

開いた窓から入ってきた風になびいて、

美しい線を描いている。


「み、三浦くんっ……です、よね?」

「ん、そうだけど」


なんで名前知ってるんだ?

あ、夕夏の関係か。


「わ、私、西野、って言いますっ……」

「…うん」


何が言いたいんだ?


「よければ、

とっ、友達になってくれませんか…?」

「え…?」

「急でキモチワルイかもしれないけどっ…、

私、三浦くんのこと気になるからっ、

だから、友達に……なり、たい…、です…」


外は相変わらず雨が降っていて、

少し肌寒い。


「え…」


気になる…?


好き、ってことか…?


今のは、告白…?


友達からでもいいから、とかいうやつか…?


「…あ、はい。わかりました」


って、俺何言ってんだよ!


西野さんに出会ったの、

今日が初めてじゃん。


「あでもやっぱり……」


『やっぱりさすがに初対面は…』

と言いかけた時、


「ほんとに!?ありがと〜!」


と、西野さんが微笑みながら言った。


「え、あ、うん」

「それじゃ、私移動教室だから!

ごめんね!それじゃ!」

「え、あ、それじゃ」


そう言ってまた一歩踏み出した時。
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