幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
Episode 4

溢れる想い

【桃果 side】


ザーッ。


6月も中旬になり、“梅雨の全盛期” になった。


(雨とか、なんだか気分下がるなぁ)


もともと雨が嫌いだからか、

低気圧が空を占めるせいかは分からないが、

最近憂鬱な気分が続いている。


「……桃果、帰るぞ」

「えっ?あ、うん」


奏に「帰るぞ」って言われることに、

まだ慣れない。


私の学校では、

水曜日は基本どの部活も休みだから、

私と奏は一緒に帰っている。


高校生になってからは

あまり一緒に帰ってなくて、

一緒に帰り始めたのは最近だったから、

未だに慣れない……。


校門を出て、舗装された道を歩いていく。


「柏田先輩とはうまくいってるの?」

「…うん」

「そっか…」


自分でそんなことを聞いたくせに、

うまくいっている、という事実に、

なんだか傷つく。


「……でも」


奏がポツリと言葉を落とす。


私は奏へ驚きと期待を映した顔を向ける。


----期待していいのかどうかは

分からないけれど。


「……最近会ってないから、

向こうの気持ちがもう無いんじゃないか、

っていう恐怖心は……」


そこまで言って、奏はチラリとこちらを見る。


「……ないことは、ない、かな?」


さっきのチラ見はなんだったのか。


「ないことはない」という言葉の

照れ隠しだろうか。


いや、こんなことを言うのに照れなど………。


「そっか。

……でも、柏田先輩は

奏のこと好きだと思うよ」

「そう、かな?」

「……うん」


一瞬の沈黙が流れた。


そんなことありえない、とか思われてる…?


奏に限ってそんなことは…ないよね。


「…桃果は?」

「え?」

「最近、割と告られてるくない?」


割と、ってなによ。


「ま、まぁ…?」


何回くらいで「割と告られてる」のか、

私はわからない。


「モテ期やっと来たんだな」

「……」


謎の説得力。


そりゃ、奏は人生全てがモテ期だもんね…。


「……それで、どんな返しを?」


何かを感じ取ったのか、奏はそう言った。


「…とりあえず、断ってる」

「どうして?」

「……好きな人、いるし」


本人の前で言うとか、恥ずっ…。


「好きな人いたっけ?」

「…………まぁ」


こいつは、何もわかってない。


まぁ、この想いが知られるよりは…。


マシなのかもしれない。


「どんな人?」

「そんなの言えないよ」

「どうして?」

「…あんた、デリカシー、

ってものを知らないの?」

「知ってる。ただ、気になる。

桃果の好きな人とか、知りたいし」


思わず目を見開く。


……罪な男。


(本当に何もわかってないみたい)


そう思うと、なんだか笑えてきた。


「うふふっ、そっか。でも、安心して?

言わないからっ!」

「全然安心できねぇよ!」


奏も笑いながら言った。


そのあと、2人で一通り笑い尽くして、

帰路に着いた。
< 54 / 62 >

この作品をシェア

pagetop