幼なじみとの恋は波乱で。(仮)
----けど、そんな思いは、見事に打ち砕かれた。
「桃果っ…!」
腕を掴まれる。
あぁ、やっぱり男子って、足速いんだな。
なぜかそんなことを冷静に考えた。
「何?」
できるだけ冷たく答えた。
今は、奏といるのが辛いよっ…。
ザーッ。
さっきまで小雨だったのに、
いつのまにか大雨になっていた。
傘もささずに道路に立つ私と奏の体は、
すでにびしょ濡れになっている。
「…こっち、向いて」
奏に言われ、私はゆっくりと奏の方を向いた。
「俺の目を見て」
「………」
一瞬どうしようか迷ったけれど、
私は彼の瞳を見つめた。
私の右腕は、未だ彼の左手に掴まれていて、
私は自由に身動きできない。
奏の長い前髪から、雫が垂れていく。
私が見上げて、彼は見下ろす。
いつこんな身長の差ができたのだろうか。
「……さっきの、見てた?」
奏は静かに私に話しかける。
「さっきの?なにそれ」
私は嘲笑うように口の端をあげながら言った。
「さっき、俺と夕夏が話してたの。
見てたでしょ?」
「なにそれ?知らないよ?
あ、もしかして、噂のこと?
ちゃんと話せたんだ。よかったじゃん」
私は口の端を上げたまま、
静かにまくしたてるように言った。
「噂のこと、っていうのは、合ってる。
……けど、桃果、いただろ?」
「……証拠は?」
こんなセリフ、苦し紛れに言うセリフじゃん。
「…桃果、カバンについてた鈴は?」
「っ……!」
完全にバレてる。
奏は、全部わかっているのかもしれない。
「………え?…あ、取れてる。
どっかで無くしたのかも」
「…ん、ここにあるよ」
----チリンッ………。
そんな聞き慣れた音とともに、
奏は私の鈴を取り出した。
「……ありがとう。どこで拾ったの?」
そう聞きながら、私は鈴へと手を伸ばす。
手が鈴に届く………、その瞬間。
----チリンッ………。
そんな音とともに、
少し、鈴が雲と近くなった。
見上げると、奏が腕を大きく伸ばして
いる。
背伸びをしても、鈴には届かない。
「ちょっ、返して」
「返す前に、ちゃんと話しよう」
「………」
少し前までは……、こんなことされたって、
鈴には手が届いたのに…。
「これは、廊下で拾ったんだ。
………2階の、3年のフロアの階段の近くで」
「っ………。
そんなとこ通らないし、やっぱりその鈴、
他の人のなのかも!」
できるだけ今の感情がバレないように、
私は明るく言った。
「…………夕夏、
自分の意思でやったわけじゃない、
って言ってたな」
「っ………」
どうして?
どうして、そんな風にっ…。
そう思うと、なぜだか涙が出てきた。
「……なんでお前が泣くんだよ…」
奏は呆れたように言い、
手で私の涙を拭った。
でも、雨のせいで
どんどん私の顔は濡れていく。
「……………だから」
「え?」
あーあ。
言うつもりなんてなかったのに。
今更「何もない」って言っても、
奏には効かないんだろうな。
「………きだから」
「…え?」
雨のせいで聞こえないのか、
はたまた私の言ってることがありえない、
と思って聞き返しているのか…。
「………好きだからだよ」
勢いに任せて言った。
まっすぐに彼の瞳を見て。
「…え………?」
今の「え?」は、
戸惑いの「え?」のようだ。
「それじゃ」
私は、奏の手の力が緩んだ隙に、
走り出した。
奏は、私を追いかけなかった。
「桃果っ…!」
腕を掴まれる。
あぁ、やっぱり男子って、足速いんだな。
なぜかそんなことを冷静に考えた。
「何?」
できるだけ冷たく答えた。
今は、奏といるのが辛いよっ…。
ザーッ。
さっきまで小雨だったのに、
いつのまにか大雨になっていた。
傘もささずに道路に立つ私と奏の体は、
すでにびしょ濡れになっている。
「…こっち、向いて」
奏に言われ、私はゆっくりと奏の方を向いた。
「俺の目を見て」
「………」
一瞬どうしようか迷ったけれど、
私は彼の瞳を見つめた。
私の右腕は、未だ彼の左手に掴まれていて、
私は自由に身動きできない。
奏の長い前髪から、雫が垂れていく。
私が見上げて、彼は見下ろす。
いつこんな身長の差ができたのだろうか。
「……さっきの、見てた?」
奏は静かに私に話しかける。
「さっきの?なにそれ」
私は嘲笑うように口の端をあげながら言った。
「さっき、俺と夕夏が話してたの。
見てたでしょ?」
「なにそれ?知らないよ?
あ、もしかして、噂のこと?
ちゃんと話せたんだ。よかったじゃん」
私は口の端を上げたまま、
静かにまくしたてるように言った。
「噂のこと、っていうのは、合ってる。
……けど、桃果、いただろ?」
「……証拠は?」
こんなセリフ、苦し紛れに言うセリフじゃん。
「…桃果、カバンについてた鈴は?」
「っ……!」
完全にバレてる。
奏は、全部わかっているのかもしれない。
「………え?…あ、取れてる。
どっかで無くしたのかも」
「…ん、ここにあるよ」
----チリンッ………。
そんな聞き慣れた音とともに、
奏は私の鈴を取り出した。
「……ありがとう。どこで拾ったの?」
そう聞きながら、私は鈴へと手を伸ばす。
手が鈴に届く………、その瞬間。
----チリンッ………。
そんな音とともに、
少し、鈴が雲と近くなった。
見上げると、奏が腕を大きく伸ばして
いる。
背伸びをしても、鈴には届かない。
「ちょっ、返して」
「返す前に、ちゃんと話しよう」
「………」
少し前までは……、こんなことされたって、
鈴には手が届いたのに…。
「これは、廊下で拾ったんだ。
………2階の、3年のフロアの階段の近くで」
「っ………。
そんなとこ通らないし、やっぱりその鈴、
他の人のなのかも!」
できるだけ今の感情がバレないように、
私は明るく言った。
「…………夕夏、
自分の意思でやったわけじゃない、
って言ってたな」
「っ………」
どうして?
どうして、そんな風にっ…。
そう思うと、なぜだか涙が出てきた。
「……なんでお前が泣くんだよ…」
奏は呆れたように言い、
手で私の涙を拭った。
でも、雨のせいで
どんどん私の顔は濡れていく。
「……………だから」
「え?」
あーあ。
言うつもりなんてなかったのに。
今更「何もない」って言っても、
奏には効かないんだろうな。
「………きだから」
「…え?」
雨のせいで聞こえないのか、
はたまた私の言ってることがありえない、
と思って聞き返しているのか…。
「………好きだからだよ」
勢いに任せて言った。
まっすぐに彼の瞳を見て。
「…え………?」
今の「え?」は、
戸惑いの「え?」のようだ。
「それじゃ」
私は、奏の手の力が緩んだ隙に、
走り出した。
奏は、私を追いかけなかった。