私の失恋の行き着く先は…No.1
「やだ、そんなあらたまって。それよりさっき紹介したいって言った人、もうすぐ来るんだけど」
「はい?」
紹介したい人って。
私、断りましたよ。
「恋愛云々抜きにして本当に優秀な人だから、紹介させて?」
そう言われてしまうと、これ以上断ることなんて出来ない。
仕事だ、仕事。
「あっ、来た来た。斎藤部長!」
遠くのほうからこちらに向かってやって来る男性。
斎藤部長って、そんな人いたかな?
役職者リストを頭に浮かべても、その名前は出てこない。
秘書室で働くうえで、名前を覚えることは必須だ。
社内の役職者は勿論のこと、得意先の上役の名前など。
「蓉子さん、斎藤部長ってどちらの部署ですか?」
本人を目の前にして訊くわけにはいかない。
ひっそりと訊ねると、蓉子さんは瞳をキラキラさせている。