愛は、つらぬく主義につき。
 その後もひっきりなしに席に祝い客が訪れ。お酒が強くないあたしに代わって杯を受け続けた遊佐は、さすがに許容量を越えたらしい。
 仁兄にプレゼントしてもらった黒のフォーマルドレスを着たあたしの膝枕で、真っ赤な顔して気怠そうに休憩中。
 向こうじゃ酒飲み達が大盛り上がりで、奥の座敷まで笑い声やがなり声が響いて来てる。

「・・・おい真。水、飲むか」

 脇で胡坐かいた榊が、冷えたミネラルウォーターのペットボトルを遊佐の頬っぺたに押し当てると、気持ちよさそうに顔がふやけた。

「みやこぉー、のーまーせーてー」

 久々の甘ったれモード。・・・かわいい。

「そうか、俺が飲ませてやる」

「・・・ばぁか」

 榊と遊佐のこんな他愛ないやり取りを見るのも、ずい分と久しぶりで。懐かしくて嬉しくて。目が潤んだ。

「・・・・・・なんかさ。三人でいるのがいいな、あたし」

 榊の視線に照れたように笑う。

「あんたには迷惑かもしんないけど。榊がいないとあたしの人生、成り立たないっていうか、一生そばにいて欲しいっていうか。これからもあたしと遊佐を助けて欲しいんだけど、・・・ダメかな?」

「・・・じゃねぇよ」

「え?」

 俯き加減にボソボソっと返って、思わず訊き返す。

「言われなくてもそうしてやるに決まってんだろ。・・・今更だ」

 顔を背けるように素っ気なく。相変わらずの反応。榊らしい。
 遊佐の髪を撫でてやりながら、あたしは笑みをほころばせた。

「だよね。ゴメン。でも一度ちゃんと言っておきたかったし、・・・あ!」

 訝し気にこっちを見やった榊と目が合う。

「・・・あのさ。もしかして榊に彼女がいないのって、ずっとあたし達に付き合わせてる所為だったりする? その辺は遠慮しないで言ってよね? 協力するから!」

「・・・・・・・・・・・・」

「え、なにそのカオ」

 理不尽そーな目付きで見られて。

「・・・・・・なんでもねぇよ」


 地の底より深い溜め息を吐いた榊の肩が、なんだかガックリ落ちて見えたけど。
 あたしの気の所為・・・かな??
< 133 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop