愛は、つらぬく主義につき。
ぬるめのお湯に浸かりながら、遊佐の脚の間で後ろ抱きにされてる格好で。背中から回ってる手があたしに悪戯を始めてる。我慢できずに漏れる声が反響して、自分じゃないみたい変なカンジになる。

「・・・・・・宮子、うえ乗って」

あたしは体勢を入れ替えて向き合い、腰を落として遊佐と繋がる。自分で動いて遊佐をキモチよくしてあげる。

遊佐があたしの腰に手を添えて、動きを加減したりもする。水の浮力を使って、効かない脚に負担がかからないように。

だからベッドでは裸で抱き合ってキスして眠るだけ。だからって、足りないなんて思ったコトは一度だってない。躰を繋げて果てるまで確かめ合って。十分でしょ?

「みやこ・・・ッ」

遊佐の切羽詰まった時の声がスキ。いいよ何回でも。

生々しい傷跡もぜんぶ晒して愛し合えるのはね。遊佐がそれを受け容れて、あたしが受け止められた証。 

粉々に打ち砕かれた未来しか見えなかった、二年前のあたしとは違う。独りよがりに自分が遊佐の全部を背負う気でいた、一年前のあたしとも違う。 

ねぇ遊佐。あたしには遊佐しかいないよ、どうやったって。だからね。

「・・・あたしと結婚して」

今度は真っ直ぐに目を見て、絶対に逸らさない。
 
遊佐は一瞬、目を瞠って。あたしをきゅっと抱き込む。

「・・・・・・不意打ちはヤメテ」

頭の上で小さく笑った気配がした。

「もっとよく考えてから言いな」

すんなり言い切られてる割りに遊佐が惑ってる気がした。顔が見たかったのに、離してくれなかった。

「考えても同じだよ」

遊佐が咄嗟に張り巡らせたバリアなんかにめげたりしない。降参させるまでね、何度でも。
 
「遊佐しか考えられないもん」

あたしの肩を抱く指先に僅かに力が籠もった。

「・・・・・・困ったお嬢だな」

吐息雑じりの呟きが聴こえた。

あんたがどんなカオしてたのか、あたしは知らない。ただ。抱きすくめられる力の強さの分だけ叶う望みがあるって。

あたしは信じてる。



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