愛は、つらぬく主義につき。
ママとひたすら餃子を包む作業をこなしながら、あたしはふと頭の隅を掠めた思いを口にしてみた。

「ねぇママ。仁兄はさ、結婚しないのかな・・・?」

「仁?どうかしらねぇ?あの子ああ見えて不器用だし。本気で好きな相手には案外なにも言えないタイプなのよ?」

困ったようにママが笑う。

「もう少し素直にならないと駄目かしらね」

「・・・そうなんだぁ」

あたしには結婚しろってハッキリ言ってたけどね。内心で溜め息。立場がどうのなんてもっともらしいコト言って、ウソならいくらでも吐けるってわけ?

「仁がどうかした?」

「ううん。・・・ほら、こないだおじいちゃんの古希祝いで会って、もう30歳過ぎだしどーなのかなって」

ごまかして取り繕う。

ママの様子だと仁兄があたしに近付いてるのを知らない。哲っちゃんも気付いてないなら、余計な心配させたくないし。 

「仁より真よねぇ」

気遣うように溜め息雑じりの瑤子ママ。 

「あの子考え過ぎるところがあるから、いっそのこと既成事実を作っちゃう方が早いって思うのよ」

・・・デキ婚をススメられました。

それも手かぁ。真剣に企んでみてもいい?、ねぇ遊佐。
< 31 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop