愛は、つらぬく主義につき。
4-2
「宮子~っ、久しぶり~っ」

紗江(さえ)ー!」

駅のコンコースで年甲斐もなく手を取り合い、きゃあきゃあ喜ぶあたし達。

「一年ぶりだね、遊佐クン元気?」

「んっ、榊も元気」

「えー会いたかったなぁ、二人にも!」

「あたしも言ったんだけどさー、女子会してこいって追い出された」

紗江はもちろん事故のことも知ってるから、遊佐の具合は分かってる。気を遣う相手じゃないんだけど、やっぱり昔の同級生に今の自分を晒すのは、抵抗があるのかも知れない。

旧姓、青木紗江は高一の時のクラスメートで。女子の出席番号一番が紗江、二番があたしだったからすぐにそれで仲良くなった。

あたしが極道の娘だって知っても『宮子は宮子だし』って、何一つ変わらなかった。遊佐や榊と四人でカラオケ行ったり、ゲーセン行ったり。クラス替えしても放課後はいつも一緒だった。
 
結婚して一児の母になった紗江は、今は県外に引っ越してる。ゴールデンウイークを利用して里帰りするたびに、都合を合わせてお茶するのが恒例になった。

ラインで時々やり取りはするけど、紗江は主婦で子育て中だし。長話は出来ないから、こうして会った時は二人してトークが炸裂しまくる。

「今日はダンナさんが子供みてんの?」

「ううん、うちの親。孫が可愛くてしょーがないのよ」

朗らかに笑う紗江は。制服着てた頃は案外クールビューティだったよねぇ。

遊佐や榊とずっといると。そんなに時間の速さも、身に染みたりしないのに。母親になった紗江とあたしの時間て、流れ方が違うのかとそんな感傷も沸く。

あたしはあたし。紗江は紗江なのにね。
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