愛は、つらぬく主義につき。
『・・・で?宮子が一生オレの面倒見るから感謝すればいーの?』

遊佐は(わら)った。一瞬で背筋が凍ったほど冷えきった眼だった。まるで(かたき)でも見てるような。

その奥に揺らいでたのが、地獄の底から湧いたみたいな強い怒りだって気付くまで、あたしは本当に情けないくらい自分しか見えてなかった。

『別にオマエが犠牲になんなくたって、オレは普通に生きてけるよ?』

冷たい焔を揺らしながら。遊佐は口の端で嘲るように嗤ってた。

犠牲・・・?

その言葉に絶句して、あたしは茫然とするだけだった。そんなんじゃない、あたしは遊佐の支えになりたいだけ。好きだから、この先もずっと一緒にいたいから・・・っっ。
 
『・・・あた、しは・・・!』

『オマエが背負う気でいるオレの人生ってなに?なんの為の結婚なの?』

言葉の矢が次々とあたしの心臓を、頭を、脚を腕を、撃ち抜いて。

『何の覚悟か知らねーけど、結婚てそうやってするもんなの?・・・それでお互いの人生潰し合ってナンか残るの?』

カンベンしてよ。

最後に吐き捨てるようにもう一度、遊佐は嗤った。 

その時はもう、ただただ遊佐の否定的な言葉の数々に打ちのめされて。ご飯も喉を通らずに、部屋に篭もって泣きっぱなしだった。

自分の何がどこで間違ってるのか、分かってるようで解ってなくて。遊佐に、あたしは必要ないって言われたとしか受け止められずに、どん底まで落ちて立ち直れなかった。

大好きな哲っちゃんの声すら届かない。三日経ち、半ば強制的におばあちゃんに部屋から連れ出された。
 
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