愛は、つらぬく主義につき。
『・・・オマエの幸せってなに?』

ふたりきりになって遊佐があたしに訊ねた。 

『ずっと遊佐といること』

素直にそう答えた。 

『オレはね、宮子が一番幸せになんないとヤなんだよ』

儚そうに遊佐は笑った。

『この脚じゃ無理だろ』

『遊佐がいれば幸せなの』

ぶんぶんと首を横に振って懸命にすがった。

『それだけでぜったい幸せだから。遊佐しかあたしを幸せに出来ないんだから・・・っ』

遊佐は切なそうに黙ってあたしの頭を撫でると、ふっと息を吐いた。

『・・・大姐さんの言うとおりだよ。このまま二人でいたって傷の舐め合いにしかなんないだろ。そんなんじゃ意味がない、分かるよな?』

視線を俯かせたあたしはひどく頼りなさげだったろう。子供をあやすような優しい口調で言い聞かせられた。

『この脚でもやれるのを周りに認めさせない限り、オレはオマエに何もいえない。宮子といれば、やっぱどっかで甘える。ならお互い離れてみて、それから答え合わせしたって・・・遅くねーだろ』

傷の舐め合いって言葉が胸を抉って。遊佐の気持ちも痛いほど分かって。あたしは家を出ることを決めた。 

最初の頃は離れてるのがただ寂しいだけだった。そのぶん週末に二人で過ごす時間が凝縮されて、濃くなった。前よりもずっと遊佐と生きていきたいって気持ちが強くなった。
 
結婚ていう区切りをつけて、二人で一緒に同じ人生を歩いていきたい。だけど遊佐はどこか、あたしとは違うなにかを見てる。気がしてた。
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