愛は、つらぬく主義につき。
たっぷりの生クリームとクランベリーソースが掛かった、ふわふわなパンケーキを口に放り込んで、紗江が「とにかくあたしはね」と口の端で笑む。

「宮子の味方だから。いつでも相談に乗るからね?」

こないだユキちゃんにも言われたな、それ。すっごく心強い。ほんと勇気の素だよ。

「ありがと紗江」

笑い返しながら、仁兄のコトが頭の片隅を過ぎった。・・・相談てほどじゃない、まだ今は。気付かなかったフリ。
 
「そう言えば榊クンは結婚とかは?彼女いないの?」

「榊?訊いても教えてくれないんだよねぇ」

あたしが肩を竦めると、紗江はどうしてか気の毒そうな顔。

「・・・あーなるほどね」

「?」

「なんでもない、なんでもない」

向こうから訊いておいて勝手に完結された。

その後もおしゃべりは尽きなかった。名残惜しかったけど、また次の再会を約束しあって笑顔で別れた。腕時計を見るともう五時すぎ。夕飯を買って帰ろうかと考える。

実は哲っちゃんと瑤子ママは夫婦水入らずの旅行中で、明日の夜まで留守だった。実家に食べに行くのも手なんだけど。スマホを取り出し、駅ビルの専門店街の手前で電話をかける。

『終わったの?紗江、元気だった?』

出るなり遊佐が笑った。

「うん元気。二人にも会いたがってたよ?」

『そっか。今どこ?迎え行くし』 

「駅だけど、なんか買って帰ろうかって思って」

『んーたこ焼き食いたい』

「オヤツでしょ、それじゃ」

『さっき大姐さんが来て重箱置いてったンだよ、炊き込みご飯とおかず。だからメシは大丈夫』

抜かりないなぁ、おばあちゃん。お返しにお菓子でも買って帰ろっと。

「じゃあ6時くらいにロータリーに来て?たこ焼き買っとく」

『了解。金くれるって言っても知らないオッサンに付いてくなよー?』

「なによオッサンって」

無邪気な遊佐の笑い声が弾けて聴こえた。



ねぇ遊佐。

あんたがどうしても結婚に踏み切れない理由って、ほんとは何?

自分ひとりで抱えて背負って、あんたはいつもなんでもない風に笑うんだよ。

でもね。それが時々もどかしくて、・・・寂しくなるんだよ。



< 43 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop