愛は、つらぬく主義につき。
いきなりで驚いた気配。でもすぐに宥めるように優しくあたしの頭を撫でる。

自分でも何がそんなに不安だったのか分からない。ただこみ上げて来る感情を止められずに、言葉がほとばしった。

「・・・ずっと傍にいるって約束して。あたしを絶対に一人にしないって・・・!」
 
遊佐はしばらく黙ったまま、あたしの髪をそっと撫で続けた。

オネガイ言って、それだけでいいから。そしたらあたしは・・・っっ。

結婚できなくてもいいってその時はじめて思った、遊佐がいてくれさえすればって。

ふと撫でる手が止まる。

「・・・オレは死んでもオマエから離れるつもりはねーよ」

静かな声だった。

「宮子を守る為にオレは生きてんだから」

それはまるで杯を交わす誓約のように響いた。

あたしが腕を解く間際、遊佐は頭の後ろを掴まえてキスを繋げた。やんわり啄ばんでは離れるスローなワルツ。アイシテルってちゃんと伝わってくるのに。

本心には鎧をまとわせて触れさせてくれない。アンバランスなキスが切なくて、・・・棘が刺さったみたいに痛かった。






あたしは、遊佐と変わらない日々を過ごした。
 
嵐の前の静けさのような、なだらかな時間を。
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