愛は、つらぬく主義につき。
十一時を回るまで、ときどきユキちゃんも混ざって楽しく時間を過ごす。
こういうのがいい、特別じゃなくていい。遊佐がいて榊がいて、大事なものがそばにあるのがいい。
そろそろお開きにして、遊佐が榊に車を回すように言った時、ユキちゃんがやんわり横から口を挟んだ。
「そうそうマコトちゃん。最近、野良猫がゴミをあさりに来てるみたいなのよねぇ」
それを聴いた遊佐の気配が少し変わった。気がした。
目配せを交わした榊が、黙ってアーチ型のドアの向こうに消える。スツールに腰掛けたままの遊佐はスマホで誰かに電話を掛けた。
「・・・ああ亞莉栖にいる、取りあえず一台な。・・・西沢に任す」
淡々とした口調で横顔に緊張は感じない。ただ前を向いてる視線だけ、いやに冷んやりとして見えた。あたしの窺うような眼差しに遊佐は「ナンでもないよ」って笑う。
このシチュエーションにはもう何度か遭遇してる。出かける時にもう一台付いて来たり、出先で今みたいに誰かを呼んだり。何かあったコトは一度もないし、きっと用心を兼ねてなんだろうって。
『自分の立場を自覚しろ、臼井の跡取りはお前だけなんだぞ』
前にここで仁兄に言われたのを思い出した。
あたしの、臼井宮子の価値ってなに?
みんなが守りたい臼井宮子って何なの。
胸の中で深い吐息を逃す。ざらついた苦みが一緒に広がってった。
こういうのがいい、特別じゃなくていい。遊佐がいて榊がいて、大事なものがそばにあるのがいい。
そろそろお開きにして、遊佐が榊に車を回すように言った時、ユキちゃんがやんわり横から口を挟んだ。
「そうそうマコトちゃん。最近、野良猫がゴミをあさりに来てるみたいなのよねぇ」
それを聴いた遊佐の気配が少し変わった。気がした。
目配せを交わした榊が、黙ってアーチ型のドアの向こうに消える。スツールに腰掛けたままの遊佐はスマホで誰かに電話を掛けた。
「・・・ああ亞莉栖にいる、取りあえず一台な。・・・西沢に任す」
淡々とした口調で横顔に緊張は感じない。ただ前を向いてる視線だけ、いやに冷んやりとして見えた。あたしの窺うような眼差しに遊佐は「ナンでもないよ」って笑う。
このシチュエーションにはもう何度か遭遇してる。出かける時にもう一台付いて来たり、出先で今みたいに誰かを呼んだり。何かあったコトは一度もないし、きっと用心を兼ねてなんだろうって。
『自分の立場を自覚しろ、臼井の跡取りはお前だけなんだぞ』
前にここで仁兄に言われたのを思い出した。
あたしの、臼井宮子の価値ってなに?
みんなが守りたい臼井宮子って何なの。
胸の中で深い吐息を逃す。ざらついた苦みが一緒に広がってった。