愛は、つらぬく主義につき。
1-2
土曜の朝なのにいつもと変わらないぐらいに目が醒めた。さすがに休みだし。ベッドの中でうだうだしてみる。

なんかね。遊佐と出かけるのがやっぱり嬉しいみたいで、たぶん浮かれてるんだろな。週末には会ってるんだけど、一緒に買い物は久しぶりだもんねぇ。寝返り打ちながら思わず顔がにやけてる。

十一時に迎えに来るって言ってたから、洗濯とお風呂掃除くらいは終わらせてー。タイムスケジュールを頭ん中で刻む。実家にいた時はろくに家事なんてしなかったのにねぇ。

包丁の持ち方から始まって、お米の研ぎ方、味噌汁の作り方、レトルトや冷凍食品の活用術、掃除の順番、洗濯物の干し方。それらをみっちり瑤子ママに叩き込まれた成果です。

おかげさまでコンビニ弁当が主食になるような生活にもならず。レパートリーも少なくて、カンタン手抜き料理しか作れなくても、一応自炊だからね? 

・・・ほんとはさ。もっとちゃんとおばあちゃんと瑤子ママに料理習って、遊佐に手料理食べさせてあげられるぐらいになんなきゃだよ。一年経ってようやく一人の生活に慣れたレベルじゃ、まだまだ道のりは遠い。

不安。焦り。遊佐は待っててくれてるハズだけど、離れてると気持ちが覚束ない。こんなにも心細くてしょうがない。

帰りたい。帰れない。遊佐から出された宿題の答え合わせが二人でできる時まで。

「・・・んーもう、起きちゃえっ」

勢いつけて布団を跳ね上げる。考え込むと勝手に暗い方にいっちゃうのはあたしの悪いクセ。そういう時の遊佐の口癖はね。

『そんな分かんない先のコト悩むより、今日の晩メシ悩みな?』

見た目もチャラくて、お気楽そうな楽天家に見えるだけで、あんたはあたしよりずっとオトナだった。

幼稚園も小学校も中学高校も同級生。おんなじ目線で肩並べてるつもりでいたら、気が付けば遊佐に手を引かれて歩いてた。昔は舌足らずに、みあちゃん、みあちゃんて、あんなに可愛かったのに。思い出して一人笑い。
  
「さーてと」

両手を上に大きな伸びをして。
 
「さっさとやるコトやっちゃおっと」 

どうせ悩むなら、男のために今日着てく服を悩むのが女ってもんでしょう?
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