愛は、つらぬく主義につき。
「あっちもこっちも助けられるか」

ぶっきらぼうに続いた。

「・・・優先順位なんて決まってんだろが」

あたしの頼みは聞けない、とあっけなく却下。思わず眸が歪む。優先順位ってなによ。あたしにだってあるわよ、そんなの。

「遊佐のことはあんたにしか頼めないから言ってんの」

「・・・・・・真は望んでねぇよそんな事」

間を置いて返ったのを、無性に苛立ちが煽られた。

「分かってるよ・・・!でもあたしは遊佐が一番大事なの。これ以上なんかあったらどうすればいいのよ。それが一番怖いのよ・・・っ」

榊に当たるつもりなんてなかった、でも止まらなかった。

「あんたにあたしの気持ちは分かんないよね。臼井の血さえ守れればそれでいいんだから」 

自嘲気味に嗤って皮肉で返した。次の瞬間。前につんのめりそうになったぐらいの制動がかかって、車が急停止する。すぐ後ろでも急ブレーキかけたタイヤの鳴る音が聴こえた。いくらくっついて来たミニバンが遊佐に呼ばれた身内でも、本気でシャレになんない。 

「あ、・・・っぶない!突っ込まれんでしょーが?!」

思い切り榊に噛みつく。
  
「・・・るな」

あんまり低い声だったから聞き取れなかった。

「なに?」

「・・・俺がそんなもんの為に命張ってるとでも思ってんのかよ」

心臓をそのまま掴まれたみたいに息が止まった。

そこでやっと気付いたあたしは心底バカな親友だったと思う。榊が『そんなもの』の為だけにあたしの、・・・あたし達の傍にいるんじゃないって、一番分かってたハズなのに。

ああもう何やってんだか。自己嫌悪のどん底。

「・・・・・・ごめん榊」

膝の上できゅっと両手を握り込む。

「思ってないよ。ほんとに・・・ごめん」

あたしの位置からは運転席の榊の顔は見えない。黙ったままエンジンが掛けられて、静かにまた車は走り始めた。

「今度言ったら絶交すんぞ・・・ドアホ」

 信号待ちで振り返りもしないで榊がボソッと低く呻った。
 
「・・・うん。ゴメン」

もう一度謝ってあたしはぎこちなく笑む。絶交って言葉がどっか温かくて・・・泣きそうだった。
 
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