愛は、つらぬく主義につき。
5-2
単なるあたしの誕生日なんだけど恒例で、家族じゃない身内もふくめて総出のお祝いをしてくれる。事務所に詰めてる人達にも料理とお酒を振る舞うし、本物の親戚とか、お父さんと杯交わした兄弟分のオジサマも顔を出して、何だかんだと毎年賑やかだ。

今夜は泊まるのを見越して、午前中で掃除洗濯をざっくり片付け、半ば強制的に迎えに来た榊の車で午後二時には実家に到着した。

表門から乗り入れ正面玄関に車を付けた榊。外から操作されたスライドドアが開けば、この蒸し暑さの中、きっちり黒尽くめのお兄さん達が五人ぐらいずつ左右に別れて、並んでる。

『お疲れ様です宮子お嬢!』

野太い声で一斉に。

「こんにちは、ご苦労さまです」

ニッコリ笑って平然を装ってるけど、相当気恥ずかしい。

でもおばあちゃんの教えどおり『下の者には毅然と』。偉ぶらず侮られず、が極意なんだとか。にしても出迎えは要らないんじゃないかなぁ。うん、フツウでいいんだけどなぁ。

乾いた笑顔のまま、普段着のあたしは花道?を通って家の中に入った。

「お帰りなさいお嬢」

ミュールを脱いでそろえてたら、後ろから渋い声がして振り返った。

「哲っちゃん!」

三つ揃いで迎えてくれた愛しのダーリンに、いつものように遠慮なくじゃれつく。大きな掌があたしの髪を撫で、不意に耳元に甘く囁かれた。

「・・・二十五か。好い女になってきたな」

ふ、にゃああああぁぁ~~っっ。
思わず意味不明な叫び声が脳内を大音響で木霊した。・・・ゴメン遊佐、本気で哲っちゃんの愛人になってもいいかな?
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