愛は、つらぬく主義につき。
そうそう、例年同様けっこう花も届いてた。赤や白の薔薇の花束が多い中、ひと際目を引いた蒼い薔薇。贈り主は三の組の相澤さんだった。しかもメッセージカード付き。

“いつぞやのお約束は必ず果たさせていただきます 相澤 渉”

『哲っちゃんっ来年は相澤さんも呼んでっっ』

真剣にお願いしておいた。
 
「宮子、そろそろ戻ってこんか?」

上座のおじいちゃんが始まってすぐ、座卓の角を挟んで右側に座るあたしに。

実家に帰って来いってお願いはわりと何かの拍子に口に上る。隣りの遊佐に大皿の料理を取り分けながら普通に笑い返した。

「でも会社に通うの遠くなるし、まだ一年ちょっとだよ?石の上にも三年て言わない?」 

「近頃は何かと物騒だしなぁ、ジイジは心配でなぁ」

毎度似たよーな会話をしてる気もするけど、世間的にはウチの方がよっぽど物騒だよ、おじいちゃん。

「哲司のところばかりで、たまにしか顔も見せてくれんし。可愛い孫と余生を過ごすのが唯一の楽しみなんだがなぁぁぁ」

泣き落としで来たかぁ。新しいパターン。向かいのおばあちゃんが一つ咳ばらいした。

「急では会社の方々にもご迷惑でしょうから、切りの良い時期を見てということですよ宮子。貴女も二十五の歳になったんですから、身の振り方をそろそろ改めなくてはね」

それって。結婚の準備をしろって意味で?視線を傾げて見せたけど、そこで話は途切れることになった。

「・・・遅くなりました」

姿を見せた仁兄の登場で。
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