愛は、つらぬく主義につき。
そこに行き着くたび、自分で打ち消してた。ずっと考えないようにしてた。遊佐があたしとの結婚を自分から諦めるんじゃないかって。

遊佐にとって。『お嬢を守れ』は、自分の存在価値そのものだった。それを果たすのが義務だなんてあたしは思ってもなかった。

『宮子はオレが守るよ』

遊佐は『アイシテル』の代わりにその言葉をくれた。口先だけじゃないのも知ってた。一生あたしの傍にいてくれる約束だって信じてた。

あの事故に遭うまで。

遊佐があの時失ったのは脚なんかじゃなかった。あたしを守れなくなった、残った自分の存在価値。

『・・・オレじゃもう宮子を守ってやれないだろ』

笑ってそんな風に自分を殺して。

だから必死に繋ぎ止めてきた。

“遊佐じゃなきゃ。
遊佐だけ。
遊佐だから。”

居てくれるだけでいいんだって、何度もなんども・・・!

それでも遊佐はずっと苦しそうだった。・・・気付いてた、知ってた、見えてないフリをしてた。
 
資格がないとか失格だとか、遊佐が勝手に決めそうで怖かった。身を引くのがあたしの為だって思わせるのだけは、死んでも嫌だった。 

あたしを愛してるなら離さないでいて欲しいだけなのに。遊佐はそういう男だって仁兄の言葉が、あたしを打ちのめした。

遊佐がどんな男かなんて、あたしが一番よく分かってる。だから。仁兄に突き付けられてるのが現実なんだ・・・って、絶望的に確信してる自分がそこにいた。
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