愛は、つらぬく主義につき。
お父さんもおじいちゃんも、あたしに一ツ橋組を負わせることは強いなかった。でもたった一人の娘。臼井家のただ一人の跡目には違いなかった。

遊佐は、あたしがそれを捨てるのを赦さない。家族を捨てるのを赦さない。育ててくれた沢山の愛情を踏みにじるのを赦さない。

人間として男として、極道を生きる者として、臼井宮子が在るべき人生(みち)を貫かせようとする。自分にもうそれが叶わないなら、仁兄に託してでも。自分は何を諦めてでも、あたしの幸せがそこに在ると信じて。

あたしだって遊佐の隣りでなら、お父さん達が守ってきたものを背負う覚悟はあったのに。

今の遊佐に哲っちゃんの地位は継げない。だから仁兄に白羽の矢が立った。あたしと結婚して仁兄が臼井の家に入れば、一ツ橋組も臼井家も継承される。・・・安泰と存続を願う誰もが望む結末。大団円。

分かってる。遊佐が望む未来(もの)。あたし達だけが欲しいものを手に入れても、シアワセとは呼べないこと。

でもね。それでもね。

「・・・あたしは・・・、結婚、しない・・・」

遊佐に抱き締められながら、声を詰まらせてしゃくり上げた。
 
「・・・あんた、しか・・・ッ・・・」

愛せないから。
貫かせて。
最期まで。
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