愛は、つらぬく主義につき。
6-1
「臼井ちゃん、なんか顔色悪い?大丈夫?」

同じ経理担当の有田さんに顔を覗き込まれた。四十をちょっと越した、バツイチで面倒見のいいママさん。娘さんと姉妹みたいに仲が良いらしい。

「・・・あーちょっと夜更かししちゃってー」

書類を渡しながら嘘で誤魔化す。笑おうと思えば笑える、大丈夫。自分に呟いた。

こうして会社に来られてる、話せる。躰の中はがらんどうで、脳みそは言われたコトだけをこなす機械に成り果てて。いっそのこと壊れたかったと思うのに。・・・正気だ、あたしはまだ。

それでも仕事から帰ってくると途端にスイッチが切れて、抜け殻になった。

着替えるのも億劫。灯りを点けると、ベッドとリビングテーブルの間に仰向けに転がる。・・・・・・なんでここに一人でいるんだっけ。ぼんやりと。

家を出て、ちゃんと一人でぜんぶ出来るようになって、じゃないと遊佐の隣りに戻れないって。二人でちゃんと答え合わせするために離れたんじゃなかった?

なのに、なんで一人で勝手に答え出して終わらせちゃうのよ・・・・・・。

いつかこんな日が来そうで、どっかでそうなるのを怖れながら、分かってたような気もする。遊佐はあたしを愛しすぎてるから、守れない自分が傍にいるのを赦さなくなるだろうって。

惚れた男のためならどんな後悔もないのにね。遊佐にもその覚悟つけてもらうまで諦めないって、決めてたんだけどね。

「・・・仁兄と結婚しろって・・・なんなのよ・・・」

あの夜から、繋ぎ止めるものが何もなくなったみたいに、心が擦り切れちゃいそうだった。
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