愛は、つらぬく主義につき。
泣きそうになりながら必死に訴えるあたしを見つめて、哲っちゃんは目を細めた。

「・・・真の脚は再手術が必要になる。二年前は若さも助けて多少は動かせるようになったが、次の保証はねぇのさ」

初めて聞かされた事実。あたしは瞬きも忘れて茫然と哲っちゃんを見上げた。

ないって。・・・もう動かなくなるってこと・・・?

「残った方もいずれ、立つことすらできなくなったらどうなる。惚れた女ひとり守りきれずに、世話になるだけの惨めな手前ェを、真は赦さねぇだろうよ」

めり込んだトドメの矢が心臓を突き破って、ナニかを逆流させる。あたしの息の根を止めようと。

「・・・ああ見えて仁も惚れた女には一筋だ」

哲っちゃんがやんわり畳みかける。

「贔屓目で悪いがね、仁なら・・・と俺も思う。一緒になるのを本気で考えちゃくれないかい」

眼差しは真っ直ぐにあたしに向けられてた。揺らぐことなく。

あたしの意思に関わりなく、どんどん外堀から埋められてく。たった独り、武器も食糧もなく籠城を余儀なくされる。孤立無援。味方はいない。

ねぇ・・・遊佐。
あたしが降参したらそれで良かったって、あんたは心から笑って・・・言えたの?



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