愛は、つらぬく主義につき。
6-2
「・・・遊佐の気持ちも、仁兄や哲っちゃんが言うことも、分かりすぎてるくらい分かってるよ・・・」

モスコーミュールのグラスを両手で包んで。あたしは黙って耳を傾けてくれてるユキちゃんにぽつりぽつり。

予定もなくなった週末。全部が行き場を失くしてどうしようもなくて。金曜の夜、独りでいたくなくて思い付いた場所はやっぱり亞莉栖しかなかった。 

四つくらいしかないテーブル席に二組のお客さん、カウンターにはあたしの他にひとり。ジャズが流れる店内は落ち着いた空気に包まれてた。

「なんであたしのシアワセを勝手に決めちゃうの・・・?守るとか守れないって、そんなものに縛られるぐらいなら、臼井の家になんて生まれて来なきゃよかった・・・」

言ってるうちに目が潤んで、あたしは小さく鼻をすすった。

「・・・マコトちゃんも辛い選択だったのよ」 

グラスを拭きながらユキちゃんが静かに。

「でもチヨちゃんを泣かせるなら間違ってると思うわ」

ここのとこ涙栓を締めても締めても、あちこちから水漏れがひどい。我慢できずにハンカチで押さえ、ぐずぐずの鼻声でユキちゃんに謝る。

「ごめんね・・・っ、こんなとこで泣いて」

「いいのよ、泣ききっちゃう方が楽になるんだから。言ったでしょ、アタシはチヨちゃんの味方だって。好きなだけ甘えてちょうだい」

「ありがと・・・」

ひっそりと涙を流してるのを。ユキちゃんは黙って、ほんの少しBGMのボリュームを上げてくれた。
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