愛は、つらぬく主義につき。
「オレらも帰るよ?」

「あ、・・・うん」

 遊佐に促されて、先に後部シートのタラップを踏む。
 運転席の榊がこっちを一瞥したから先に謝った。

「ごめん・・・色々」

「・・・あんまり心配させるな」

 素っ気なくても言葉どおり心配してくれてたハズ。

「ごめん」

 口の中でもごもごと。
 織江さんと藤さんのコトは言えない。反省と自覚。

 遊佐がゆっくりとあたしの隣りに身体を沈めたのを見計らって、車が発進した。
 ややあって遊佐が、やれやれとばかりに溜め息を漏らす。

「亞莉栖にいると思ってたら、GPSが変な方に移動してくし。あんまりオレの寿命、縮めンなよ」

 頭を撫でた腕があたしを引き寄せたから。肩に寄りかかってそのまま。
 遊佐の体温。指先。・・・存在。心底、安心して。
 バラバラに砕け落ちてたセカイが見る間に再構築される。いとも簡単に。

「ユキ姉は内緒とか言って教えてくんねーし。もーちょっとで、相澤代理ン家に襲撃かけるトコだった。藤代さん相手なんて、考えたくもねーよ」

「え? ユキちゃん言わなかったの?」

 意外で驚いた。・・・もしかして、あたしが織江さんとゆっくり話が出来るようにかな?
 引き合わせてくれた心遣いには本当に感謝しかない。ありがとう、ユキちゃん。

「・・・ま、宮子が無事ならいいって」

「うん。・・・ごめん」

 こうやって遊佐の温もりを感じてると。あの夜が夢だったんじゃないかって錯覚する。

 目を閉じて記憶を反芻しても。あれから二週間。自分に出来ること、したいこと、すべきことをひたすら考えた日々。 

 ユキちゃんも織江さんも、あたしの想いを真っ直ぐぶつければいいって。
 届いて叶うかもしれない。当たって砕けてお終いかも。
 そのときは。ユキちゃんと織江さんと、榊も巻き込んで、傷ついたあたしを慰める会の永久会員になってもらおうかな。内心でクスリと零れた。

「・・・・・・遊佐」

 遊佐に躰を預けきって、ぽつんと呟く。

「・・・ん」

 答えた遊佐の空気も穏やかだった。

「あたしね」

 
 長い夜になりそうだなぁって。頭の片隅でぼんやり・・・思った。


 
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