愛は、つらぬく主義につき。
7-1
 あたしの行方不明事件から一週間。
 7月に入って梅雨も本格化してた。毎日、曇りか雨。蒸したり梅雨寒になったり。

 週末の休みも晴れ間には恵まれなくて、ピンチハンガーにぶら下がった洗濯物が窓際を占拠してる。
 溜まった家事を済ませちゃうと、もうやるコトもない。天気が悪いと出かけるのも何だか億劫で。

 遊佐は今頃なにしてんだろ・・・・・・。
 ほんとは逢いたくて逢いたくて、逢いたい。

 あたし達は別れたワケじゃない。結婚ていう合流点に辿り着けてないだけ。そう割り切るなら。・・・・・・逢いにも行ける気がした。
 仁兄ともこんな中途半端なままで。遊佐に何か言えるものなら。

 
 あの後、遊佐にも相当叱られるのを覚悟してたのに。電話越しに聴こえたのは憔悴して疲れ切った声だった。

『・・・頼むから、二度とスマホの電源落とすような真似すんな・・・。オマエに何かあったら生きてけねーだろ・・・・・・』

 行き先が仁兄のところだったコトは何も言わなかった遊佐。一線を引かれてるみたいで・・・それが却って辛かった。


 どうしたら。

 頭の中で空回りする愚問愚答。

 仁兄に情に訴えたところで、あのひとはそんなセンチメンタリストじゃない。

 いっそ、おばあちゃん達に遊佐と結婚させて下さいってお願いしたら。聞き届けてくれるの・・・? 
 遊佐は。・・・本当にそれを望む?


 あたしは、レースカーテン越しに映る薄灰色の空を見やって、やるせない溜め息を吐くばかりだった。
< 88 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop