毒舌社長は甘い秘密を隠す
超イケメンのアルパカ
「うわー、めんどくさいなぁ」
帰宅して、通勤バッグの中身を出していたら、社用携帯を自席に忘れてきたと気づいた。
四月下旬の水曜、二十一時過ぎ。
今から会社に戻るのは面倒だけど、この週末に連絡が入ったらと思うと、自然と玄関に足が向かっていた。
自宅マンションから徒歩五分の駅前大通りに出て、車の往来を眺める。
近くの信号が赤になると、ちょうど右手から空車を示す行燈を灯したタクシーが走ってくるのが見えて、私は手を挙げた。
「どちらまで?」
「Fluffy ALPA本社前までお願いします」
「かしこまりました」
【Fluffy ALPA株式会社(フラッフィーアルパ)】は、業界でも三本の指に入る不動産会社だ。
新卒入社した私は、二年前に社長秘書の職を命じられ、日々勤務している。
携帯を忘れなかったら、今頃のんびりしてたのにな。
退勤する時に、書類と一緒に社用携帯を引き出しにしまったのを思い出して、この上なく面倒な状況を作った自分にため息をついた。
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