毒舌社長は甘い秘密を隠す

「――空にある星は、全部食べられるんだよ。ひとつずつ違う味がするんだって。ルナ、知ってた?
 ――ううん、しらなかった。

 レオはルナの目が大好きです。チョコレートのような色をしていて、とてもかわいいからです」

 彼は時々私の様子を伺いながら、ゆっくりと読み進めていく。会社で見せる冷たさもなく、ライトの橙の明かりと同じくらい穏やかだ。
 だけど、彼と目が合うたびにドキドキしてしまって、私は慌てて視線を絵本に戻す。


「ふたりは、夜空に手を伸ばして、またたく星を掴みました。それでも空にはたくさんの星が残っています。
 ルナもレオも、自分の手のひらに星が輝いているように見えました。

 そして、せーの、と呼吸を合わせて、一緒に星を食べます」

 彼の声も、絵本のページをめくる音も心地いい。
 もし、彼が父親になったら、きっとこんなふうに子供を寝かしつけるんだろうなぁ。
 でも、その子は私の子ではなく、きっと海外の令嬢との間に産まれたハーフのかわいい子だ。

 社長は本当にお見合いをしちゃうのかなぁ。

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