毒舌社長は甘い秘密を隠す

「――ルナ、どんな味がする?
 ――うーん……りんごみたいな味かなぁ。

 レオが食べた星は、チョコレートの味でした。僕の好きな味だと、レオは言いました。

 それからふたりは、空にある星をいっぱい食べました。
 いちご、ぶどう、メロン、ヨーグルト、クッキー、ケーキ、キャンディー、アイスクリーム。なかにはコーンスープの味やハンバーグの味までありました。
 どの星も、ふたりの好きな味ばかりです。

 最後に残った星に手を伸ばそうとしたら、レオが言いました。

 ――あの真っ赤な星は、お姫さまが食べる星なんだ。王子さまがプレゼントするためにあるんだよ。
 ――どんな味がするのかなぁ。

 いつかお姫さまになりたいと思っているルナは、その星を食べてみたいと思うようになりました――」

 社長の優しい声色に誘われ、だんだんまぶたが重くなってきた。
 彼の匂いと温もりは、今夜に限ってなんだか落ち着く気がして……。

 社長がお見合いをする前に、気持ちを伝えたほうがいいのかな……。
 話に聞き入りながらも、心の中はとても複雑だ。

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