毒舌社長は甘い秘密を隠す

 エレベーターを下りても、お互いに無言。
 帰ってすぐに、社長は私のことなど気にせずに書斎に入ってしまった。

 私はダイニングチェアにバッグを置いて、冷蔵庫から出したお茶を飲みながら、どうして彼がこんなに不機嫌なのか、ひとまず冷静に考えてみることにした。
 彼のイライラにつられてしまっては解決しないと気づいたからだ。

 午前中に注意されたのに、飲みに出たから?
 でも、彼はそのくらいで怒ったりしないタイプだと思う。むしろプライベートには踏み込んでこない。

 ……あ、もしかして。さっきの女性を連れ込むつもりだったとか?
 だから、私に帰って来るかどうか聞いたのかもしれない。こんなにセキュリティが厳重なマンションなのに、わざわざドアチェーンをすると連絡してきたのは、そういう理由だったのか。

 強引に帰していたのも、そういうことかと思っていたら、ちょうど社長がリビングに入ってきた。
 Yシャツの裾をスラックスから出し、ボタンも開けて着崩した格好ですら様になる。

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