毒舌社長は甘い秘密を隠す

「空気を読まず、帰ってきてすみませんでした」
「……ビール取って」
「はい」

 この二年でも指折りの不機嫌デーだ。
 謝って済むことなのかもわからないし、許しを乞うほどのことなのかとも思う。それに、仕事のことならまだしも、プライベートのことでは対応しかねる。
 よくよく考えてみれば、彼が私をここに置いているのだから、もうちょっと気を使ってほしい。女性を泊めるようなことがあるなら、私は目黒の自宅に戻ったって構わないのだ。

 ……なんて、心の中で強がるけれど言えるわけがない。他の女性と会っていたのを見ただけで嫉妬しているほどだ。
 毎夜、私を抱きしめて眠っているベッドで、さっきの女性と愛し合うなんて……考えるだけで胸が苦しくなる。

 私は彼にとってなんなのか、それをハッキリさせてしまったら、片想いにも終止符を打たなくてはいけないのだろう。

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