毒舌社長は甘い秘密を隠す
「どうして謝るんだ?」
「お邪魔してしまったかと、そう思いまして」
「邪魔?」
しまった! 言ってしまった!
ハッとして口を手のひらで覆うも、彼はじっと私を見つめている。
視線の圧に負けて、ついさっき見聞きしたと白状するしかなさそうだ。
「あの、先ほど下の車寄せまでタクシーで帰られたのを見てしまって」
「あぁ……なるほど。覗き見に盗み聞きとは、スパイみたいだな」
「そんなつもりはありません!」
「だろうな」
私を手のひらで転がすように茶化しているのか、彼は青ざめたり怒ったりする私の顔を見て笑っている。
「今夜、あの女性をご自宅に泊めるおつもりだったんですよね?」
「いや、そんなつもりはなかったよ」
「私に連絡をくださったのは、そういう理由だと思ったのですが」
「見当はずれもいいところだ」
グラスに注いだビールを半分ほど一気に飲み干した彼は、ふっと短く息をついた。