毒舌社長は甘い秘密を隠す
side 響
――『今は社長のご指示でこちらで生活していますから』
そうじゃない。俺が聞きたかったのは、そういう言葉じゃなくて。
洗面室でYシャツを脱ぎ捨て、クリーニング用のバスケットに放った。
鏡に映るは、三十一歳の自分。
約三年前から密かに片想いをしているただの男が、一日の疲れをにじませているだけ。
見飽きた自分の顔をいくら見つめても、別にどうってことはない。
だけど、女が途切れたことはないし、今までは選ぶことができた。
でも、彼女は違う。
絶対に俺を選ばない気がしてならない。
だから必死になる。
どうしても手に入れたくて、あらゆる手を尽くしてしまう。
日頃、一緒に仕事をしている秘書の沢村さんを自宅に囲って、早三カ月。
いつも以上に過ごす時間が長いせいで、だいぶ狂ってきた。
彼女がいない夜は考えられないし、他の男と話しているだけでイライラする。それが社員だろうとなんだろうと、俺以外の男は一切排除したいくらいだ。