毒舌社長は甘い秘密を隠す
金曜の予定はフラグ付きか。そりゃそうだよな、九条さんが来るんだから。
彼女の口から聞いたわけではないけど、なんとなく察するところはある。
九条さんが彼女と折り入って話したことなんてなかったから、俺が体調を崩して休んだ日にふたりが話したと聞かされて、なんとなく気になっていた。
後日、九条さんから『大切な人と暮らす部屋を探している』とだけ聞かされて以来、日を追うごとに予感は現実になり、五月の連休には物件を探すふたりと出くわしてしまった。
彼女がどんな部屋に住みたいかを話し、それを聞いた九条さんが物件を探してきて、ふたりで内見。自然とそういう流れなのだろうと思った。
しかも、報告しなかったことを謝ってきたり、あとで九条さんから挨拶があればとかなんとか……。
だから、てっきりふたりはつき合っているとばかり思っていたのに、実はそうではないということも最近気づいた。
強引に俺が囲っていても、なんら問題なく過ごせているのがなによりの証拠だと思う。
おそらく、俺と九条さんはライバルだ。
偶然とはいえ、このマンションの別棟に内見しにきていたのは驚かされたなぁ……。
彼女と暮らしている俺にどれだけ分があるんだろう。