毒舌社長は甘い秘密を隠す
こんな誘い方じゃ断られるだろうなと思いつつ、返事を待つ。
ほんの少し頬を染めた彼女は、作業を終えたタブレットを凝視して黙り込んでいる。
来週の都合まで考えてくれているのか、九条さんを気にかけているのか……。
「……社長は、なにがしたいですか?」
「えっ!?」
「あ、すみません。暇つぶしですもんね」
思いがけない反応に俺が動揺したせいで、彼女は前言撤回してしまった。
「社長と出かけたら目立ってしまうと思いますし、もし会社の誰かに見られたら大ごとになりますよね。……出かけるなんて、ありえないのにすみません」
「いや、俺は別に」
今まで散々女を口説いてきたくせに、こういう時に限って言葉が出ない。
「私もお風呂、入ってきます」
俺が引き留める間もなく、彼女は小走りで寝室に行ってしまった。