毒舌社長は甘い秘密を隠す

「はぁ~……」

 思いっきりため息をついて、肩を落とした勢いでソファに崩れるように座る。
 デートに誘うのって、こんなに難しかったか?
 強引に囲って、キスもしたのに……たかがデートに誘うだけでこんなにドキドキするなんて。

 でも、さっきの様子だと断られたわけではなさそうだ。

 どこに連れていこうかな。なにを買ってやろうかな……。
 考えただけで自分でも引くくらい頬が緩んでしまう。

 書斎からタブレットを持ち出し、流行りの店や都内で催されているイベントを調べ上げる。
 こんなに一緒にいるのに彼女がなにを好きなのか、どんなことなら楽しいと思ってくれるのか、わかっているようでわかっていない。

 三カ月同居していても、社長と秘書の壁はなかなか分厚い。
 この部屋にいる時くらいは、ひとりの男とひとりの女でいたいのに、彼女がそれを許してくれていないようだ。

 それは、彼女が真面目だからなのか。
 それとも九条さんの存在があるからなのか。

 本音を聞いたら、俺の片想いが終わってしまいそうでなかなか切り出せずにいる。

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