毒舌社長は甘い秘密を隠す
「おはよう」
「おはようございます。すぐに伺います」
秘書室に戻る途中で、出勤してきた社長と顔を合わせた。
急いで自席に戻り、今日の予定を確認するためにタブレットを持って社長室へ向かった。
「失礼いたします」
ドアを三回ノックしてから入ると、彼はいつものようにサマースーツの上着を脱いで、ハンガーにかけているところだった。
「本日の予定ですが、午前中は決裁等の処理に当てていただきたく思います。午後は社内のランチミーティング、十五時から九条様がいらっしゃいます」
「了解。今日もよろしく頼む……って、これは」
彼がふと机上のペンスタンドに目を留める。
「これを使えと?」
「ええ、お約束していただいたので」
「……わかったよ、君からのプレゼントだからありがたく」
一瞬だけ怪訝にされたけれど、すぐに降参と言わんばかりに笑ってくれた。
不意を突かれた私は、胸の奥にときめきを隠しつつ、一礼して社長室を出た。