毒舌社長は甘い秘密を隠す
【番外編SS】副社長は甘い秘密もお見通し
「後任の秘書の方は決まったんですか?」
広々とした社長室で、同い年にして起業家でもある井浦社長に問いかけた。
彼は家柄に甘んじることなく、この会社を興した経歴を持っていて、俺が尊敬する人物のひとりだ。
「あぁ、決まったよ。営業部にいる沢村さんにお願いしようと思ってる」
「営業部からですか」
来客用のソファに座って、向かい合って話す。
どうしてわざわざ営業部から?
秘書にするなら、社内の経験者とか外部から中途採用するとか、いくらでも方法はあるのに。
「沢村さんは、秘書のご経験があるんですね」
「いや、営業部長からはないと聞いている」
「……なぜ、そのような人選を?」
「深い意味はないよ。営業部にいる人間なら、熱心に働いてくれそうだと思ったからだ」
社長はそう言って立ち上がり、俺に背を向けた。